九州・沖縄ブロックの平成27年度(2015年)の登録販売者試験の問題(過去問)について、第3章の漢方・生薬からの出題を解説します。
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目次
当ページについて
- 試験問題や回答については下記の福岡県のwebサイトからこれらを確認し、解説等を作成しています。福岡県ホームページ(登録販売者試験に関するページ)*実際の過去問のPDFも無料で取得できます。福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県共通した問題です。
- このページでは、漢方および生薬に関するものに焦点を当てて解説しています。従いまして、問題については一部を抜粋したものとなっております。
- 過去問の回答を含んでいますのでご了承の上閲覧ください。
漢方・生薬 問題の出題傾向
漢方・生薬から18問出題されています。
そのうち、全問漢方についての問いが6問出題、全問生薬についての問いが 2問、全問漢方・生薬についての問いが1問、その他項目を合わせた複合問題が9問でした。
漢方・生薬ともにかなり出題されていますね。漢方はキーワードだけでは解けない”カンゾウを含まないもの”と”マオウ を含むもの”を選ぶという問題が合わせて2問ありました。
*このような問題の対策には登録販売者試験の漢方まとめ・覚え方【カンゾウを含まない漢方一覧他】のページをご覧ください^ ^その他の対策ページもあります。
生薬も全問生薬についての問題が2問もあり、問76に関してはゴバイシ やアカメガシワといった一部のテキストには記載がないようなマイナーな生薬についても問われておりました。
問64
解熱鎮痛薬に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)アセトアミノフェンは、主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗 炎症作用は期待できない分、他の解熱鎮痛成分のような胃腸障害は少なく、空腹時に服用できる製 品もある。
イ)ボウイは、フトミミズ科の Pheretima aspergillum Perrier 又はその近縁動物の内部を除いたも のを基原とする生薬で、古くから「熱さまし」として用いられてきた。
ウ)イブプロフェンは、アスピリンに比べて胃腸への悪影響が少ないことから、一般用医薬品として、 小児向けの製品もある。
エ)イソプロピルアンチピリンは、一般用医薬品で唯一のピリン系解熱鎮痛成分である。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
正答 2
ボウイは、ツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓性の茎及び根茎を、通例、横切したものを基原とする生薬で、鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用があり、煎薬として筋肉痛、神経痛、関節痛に用いられるものです。
イ)はジリュウについての記述ですね。
問65(全問漢方)
以下の鎮咳去痰薬として用いられる漢方処方製剤のうち、構成生薬としてカンゾウを含まないものを一つ選びなさい。
正答 4
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)がカンゾウを含まないことについてを問われる問題は頻出なのでかならず覚えてください!
問66
胃の薬に配合される成分やその副作用に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下 から一つ選びなさい。
ア)ロートエキスは、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が遅くなる(徐脈)おそれ があるため、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。
イ)ジメチルポリシロキサン(別名ジメチコン)は、消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として、配合されている場合がある。
ウ)銅クロロフィリンカリウムは、中和反応によって胃酸の働きを弱めること(制酸)を目的として、配合されている場合がある。
エ)コウボク(モクレン科のホオノキ、カラホオ等の樹皮を基原とする生薬)は、香りによる健胃作用を期待して、配合されている場合がある。
**アイウエ
1正正誤誤
2正誤正正
3誤正正正
4誤正誤正
5誤誤誤誤
正答 4
ア)ロートエキスは、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が遅くなる(徐脈)ではなく、”乳児の脈が早くなる(頻脈)”です。
エ)コウボクは正しい記述です。
問67
止瀉薬及びその配合成分に関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
- 急性の激しい下痢又は腹痛・腹部膨満・吐きけ等の症状を伴う人では、細菌性の下痢や食中毒が疑われるため、収 斂 成分を主体とする止 瀉 薬の安易な使用は避けることが望ましい。
- ロペラミド塩酸塩は、中枢神経系を抑制する作用があり、副作用としてめまいや眠気が現れることがある。
- オウバクのエキス製剤は、苦味による健胃作用よりも、ベルベリンによる止瀉作用を期待して、消化不良による下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等の症状に用いられる。
- 腸管内の異常発酵等によって生じた有害な物質を吸着させることを目的として、木クレオソートが配合されている場合がある。
正答 4
オウバクは正しい記述です。このほか、瀉下薬以外にも外皮用薬として打ち身、捻挫として用いられることがあります。
問69(全問漢方)
漢方処方製剤に関する以下の記述について、正しいものを下から一つ選びなさい。
体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの喉の渇き、ほてり、湿 疹 ・皮膚炎、皮膚のかゆみに適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸虚弱で冷え症の人では、食欲不振、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。また、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがある。
正答 2
主にのどの痛みや乾きなどに用いられる漢方ですね(腸の不調 に適応した麻子仁丸(ましにんがん)は除きます)。
その中でも”ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ”など皮膚に関する症状にも適応があるものは白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)だけです。従って正答は2ですね。
他の漢方については各リンク先のページをご覧下さい。
問70
循環器用薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)日本薬局方収載のコウカを煎じて服用する製品は、冷え症及び血色不良に用いられる。
イ)ルチンは、ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を期待して用いられる。
ウ)へプロニカートは、代謝されてタンニン酸が遊離し、そのタンニン酸の働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示すとされる。
エ)ユビデカレノンは、心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高めることによって血液循環の改善効果を示すとされる。
**アイウエ
1正正正正
2正正誤正
3正誤正誤
4誤正誤誤
5誤誤正正
正答 2
エ)コウカは正しい記述です。
問71
強心成分と動悸、息切れ等に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)ゴオウは、心筋に直接刺激を与え、その収縮力を高める作用(強心作用)を期待して用いられる。
イ)センソは、有効域が比較的狭く、一般用医薬品では、1日用量が10mg以下となるよう用法・用量が定められている。
ウ)心臓は、通常、体性神経系によって無意識のうちに調整がなされており、激しい運動をしたり、興奮したときなどの動悸や息切れは、正常な健康状態でも現れる。
エ)気つけとは、心臓の働きの低下による一時的なめまい、立ちくらみ等の症状に対して、意識をは っきりさせたり、活力を回復させる効果のことである。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
正答 2
ア)ゴオウは正しい記述です。
イ)センソは誤り。1日用量が10mg以下ではなく、”5mg以下”が正しい答えです。5mgを超えたら劇薬となりますので、登録販売者は販売ができませんね><
問74(全問漢方)
以下の漢方処方製剤に関する記述について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)体力に関わらず、筋肉の急激な痙攣を伴う痛みのあるもののこむらがえり、筋肉の痙 攣、腹痛、腰痛に適すとされる。ただし、症状があるときのみの服用にとどめ、連用は避ける。
イ)体力中等度以下で手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するものの頭痛、頭痛に伴う吐きけ・ 嘔 吐、しゃっくりに適すとされる。
ウ)体力中等度で痛みがあり、ときにしびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛に適すとされるが、消化器系の副作用(食欲不振、胃部不快感等)が現れやすい等の理由で、胃腸が弱く下痢 しやすい人には不向きとされる。
ア |
イ |
ウ |
|
1 |
芍薬甘草湯 |
呉茱萸湯 |
疎経活血湯 |
2 |
十全大補湯 |
呉茱萸湯 |
防已黄耆湯 |
3 |
芍薬甘草湯 |
温経湯 |
防已黄耆湯 |
4 |
十全大補湯 |
温経湯 |
疎経活血湯 |
5 |
芍薬甘草湯 |
温経湯 |
疎経活血湯 |
正答 1
キーワードは次の通りです。キーワードを覚えればこのタイプの問題は解きやすいです!
問76(全問生薬)
胃腸に作用する薬に配合される成分とその作用の関係について、正しい組み合わせを下から一つ選 びなさい。
成分 作用
ア)ケツメイシ – 整腸(便通を整える)作用
イ)ゴバイシ – 苦味による健胃作用
ウ)アカメガシワ – 胃粘膜を保護する作用
エ)ボレイ – 細菌感染による下痢の症状を鎮める作用
1(ア、ウ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(イ、エ)
正答 1
イ)ゴバイシは止瀉薬として収斂作用をもつ生薬。苦味による健胃作用のあるものは下記のページでまとめています。
胃薬の成分まとめ・覚え方④健胃成分
エ)ボレイは制酸作用や止瀉作用をもつ生薬。従って下痢とは正反対ですね。
問77
ヒマシ油に関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
- ヒマシ(トウダイグサ科のトウゴマの種子)を圧搾して得られた油を用いた生薬である。
- 腸内容物の急速な排除を目的として用いられ、急激で強い 瀉 下作用( 峻下作用)を示す。
- 吸収された成分の一部が乳汁中に移行して、乳児に下痢を引き起こすおそれがあり、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。
- 防虫剤や殺鼠剤を誤って飲み込んだ場合等、脂溶性の物質による中毒に使用する。
正答 4
ヒマシ油は防虫剤や殺鼠剤などの脂溶性物質を誤飲した場合には使用してはいけません(理由:ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出して、中毒症状を増悪させるおそれがあるから)。4の記述は従って誤りです。
問78
眠気を促す薬とその成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びな さい。
ア)抑肝散(よくかんさん)は、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症に適すとされる。
イ)生薬成分のみからなる鎮静薬であれば、長期連用しても問題ない。
ウ)ジフェンヒドラミン塩酸塩は、脳内におけるヒスタミン刺激を高めて、眠気を促す。
エ)カノコソウ、チャボトケイソウは、神経の興奮・緊張緩和を期待して配合されている。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
正答 2
ア)抑肝散(よくかんさん)、エ)カノコソウ、チャボトケイソウは正しい記述です。
問80(全問漢方・生薬)
泌尿器用薬とそれに配合される成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)日本薬局方収載のウワウルシは、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられる。
イ)猪苓湯(ちょれいとう)は、体力に関わらず、排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿 感、頻尿、むくみに適すとされる。
ウ)尿量増加(利尿)作用を期待して、カゴソウ(シソ科のウツボグサの花穂を基原とする生薬)が配合されている場合がある。
エ)竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)は、体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるものの排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(おりもの)、頻尿に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、胃部不快感、 下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
**アイウエ
1正正正正
2正正正誤
3正誤誤正
4誤正誤誤
5誤誤正正
正答 1
すべて正しい記述です。覚え方は各リンク先のページに載せていますのでよかったらご覧ください。
問82(全問漢方)
女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤に関する以下の記述につい て、正しいものを下から一つ選びなさい。
体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、 耳鳴り、動悸などを訴えるものの月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労 倦 怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰 の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り、低血圧に適すとされるが、胃腸の弱い人では、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
正答 5
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の記述ですね。キーワードは”低血圧”です。
他の漢方については各リンク先のページをご覧下さい。
問83
内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)に配合されている主な成分とその副作用の関係につい て、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
成分 副作用
ア メキタジン- ショック(アナフィラキシー)
イ ベラドンナ総アルカロイド – 偽アルドステロン症
ウ プソイドエフェドリン塩酸塩 – 不眠、神経過敏
エ グリチルリチン酸二カリウム – 散瞳、口渇
1(ア、イ) 2(ア、ウ) 3(イ、エ) 4(ウ、エ)
正答 2
これはイとエの記述が逆になっていますね。
問84(全問漢方)
以下の内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)として用いられる漢方処方製剤のうち、マオウ を含むものを一つ選びなさい。
正答 5
これはなかなか難しい問題ですね。葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)の元である葛根湯(かっこんとう)にはマオウを含みますよね。
葛根湯は馴染み深い漢方だと思いますのでここから答えを割り出す方法もオススメです。葛根湯加川芎辛夷はこれに「血行不良や冷えに効くセンキュウ、鎮静・鎮痛作用のあるシンイを加えたもの」です。
問90
歯痛薬又は歯槽 膿 漏薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)歯痛薬は、歯の齲蝕による歯痛を鎮めるだけでなく、歯の齲蝕を修復することもある。
イ)歯槽膿漏薬には、患部局所に適用する外用薬のほか、内服で用いるものもある。
ウ) 歯痛薬に配合されるカミツレは、アカネ科のクチナシの果実を基原とする生薬で、抗炎症作用を期待して用いられる。
エ)歯槽膿漏薬に配合されるセチルピリジニウム塩化物は、歯肉溝での細菌の繁殖を抑えることを目 的としている。
**アイウエ
1正正正誤
2正正誤正
3正誤誤誤
4誤正誤正
5誤誤正正
正答 4
ウ)は誤った記述です。カミツレはキク科のカミツレの頭花を基原とする生薬でかぜ薬、歯槽膿漏薬に用いられます。抗炎症作用という一部記述は合っているので難しい問題ですね。
ウ)はサンシシについての記述です。
問95(全問漢方)
漢方薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア)漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合であっても、生後6ヶ月未満の乳児には使用しないこととされている。
イ)一般用医薬品である漢方処方製剤では、「証」という漢方の専門用語を使用することを避け、「しばり」(使用制限)として記載されている。
ウ)すべての漢方薬は、作用が穏やかで、副作用が少ない。
エ)現代中国で利用されている中医学に基づく薬剤は、漢方薬ではなく、中薬と呼ばれ、漢方薬とは明らかに別物である。
**アイウエ
1正正正誤
2正正誤正
3正誤誤誤
4誤正誤正
5誤誤正正
正答 4
ア)の問題は、正しくは”生後6ヶ月未満”の乳児です。
ウ)は解説するまでもないですね。常識で解けるサービス問題です。